手術が決まると、からだの準備に気を取られがちですが、実は「お口の中」も手術の成功と回復に深く関わっています。
そのため、近年では「周術期口腔機能管理」という、歯科からのサポートが重要視されています。
なぜ口のケアが必要なの?
手術時に全身麻酔下で気管内挿管を行うことがあります。これは口からチューブを入れて人工呼吸を管理する処置ですが、お口の中の状態によっては歯が折れたり抜けたりするトラブルにつながることがあります。また術後は免疫力が落ち、口の中の細菌が肺に入ることで誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こす可能性もあります。
周術期口腔機能管理で行うこと
歯科では、以下のような管理や処置を行います:
① お口の中のチェックと清掃
虫歯や歯周病の有無、歯石の蓄積を確認し、専門的なクリーニングで細菌を減らします。
② 動揺歯(ぐらついた歯)の確認
特に全身麻酔による気管内挿管時には、歯にチューブが当たって歯が折れる・抜けることがあります。ぐらついた歯がある場合は、事前に固定や抜歯、保護処置を行うことがあります。
③ マウスピースの製作(必要に応じて)
歯の動揺があっても抜歯を避けたい場合や、前歯などを気管チューブから保護する目的で、「マウスピース(口腔内装置)」を製作することがあります。
このマウスピースは術中に装着することで、歯を守り、事故を防ぐ役割を果たします。個別に型取りして作るため、ぴったりフィットする安心感があります。
④ かむ力・飲み込み力などの評価と訓練
嚥下機能(飲み込む力)や口腔乾燥の状態を確認し、口腔リハビリや体操を指導することもあります。
対象となる方は?
がんや心臓・肺・消化器などの大きな手術を控えている方
高齢で術後合併症のリスクが高い方
全身麻酔で手術を受ける予定の方
嚥下機能や口腔衛生に不安がある方 など
医科と歯科の連携で、安全な手術をサポート
この「周術期口腔機能管理」は、医科と歯科のチーム医療として行われており、健康保険の対象です。
対応している病院・歯科医院であれば、安心して受けることができます。
まとめ
手術を安全に、そして術後を元気に過ごすためには、口の中のケアがとても重要です。
気管内挿管による歯のトラブルや、術後の肺炎を防ぐためにも、「周術期口腔機能管理」を活用しましょう。必要に応じて、マウスピースの作製も含め、歯科医師が一人ひとりの状態に合わせたサポートを行います。
手術が決まったら、ぜひ早めに歯科への相談をおすすめします。