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原因のわからない歯の痛みでお悩みの方へ ― 非歯原性歯痛の正体とは

2025.06.14

歯科コラム

「歯が痛い=虫歯」とは限らない?非歯原性歯痛について解説します

「歯が痛いから虫歯だろう」と思って歯科医院を受診したものの、診察しても異常が見つからない・・・。そんな経験はありませんか?

実は、歯に原因がないのに歯が痛いように感じる「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」という状態が存在します。今回は日本口腔顔面痛学会が発行した『非歯原性歯痛の診療ガイドライン 改訂版(2019)』の分類をもとに、その種類と特徴について解説します。

 

非歯原性歯痛とは?

非歯原性歯痛とは、虫歯や歯周病など、歯や歯肉そのものに原因がないのに感じる歯の痛みのことを指します。神経や筋肉、心臓など、まったく別の場所の異常が「歯の痛み」として現れることもあります。また非歯原性歯痛は中高年の女性に多くみられる傾向がある一方で、年齢や性別を問わず誰にでも起こりうる可能性があります。

 

非歯原性歯痛の分類

1. 筋・筋膜痛による歯痛
咀嚼筋や首の筋肉の緊張・炎症が原因で、歯が痛く感じられることがあります。特に、食いしばりや歯ぎしりが原因になることが多いです。

2. 神経障害性疼痛による歯痛
神経の異常によって起こる鋭い痛みです。さらに、以下の2つに分類されます。
・発作性(三叉神経痛など):突然、電気が走るような痛みが繰り返し起こります。
・持続性(帯状疱疹性神経痛など):長く続くズキズキとした痛みが残ることがあります。

3. 神経血管性頭痛による歯痛(片頭痛、群発頭痛など)
頭痛の一種ですが、痛みが上顎の奥歯やこめかみ、目の奥などに放散することで、歯が原因のように感じることがあります。

4. 上顎洞疾患による歯痛
上顎の副鼻腔(上顎洞)に炎症が起きると、上の奥歯に痛みが出ることがあります。特に、鼻づまりや顔の圧迫感を伴うことが多いです。

5. 心臓疾患による歯痛(狭心症など)
狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患が原因で、顎や歯に放散痛が出ることがあります。運動時に痛みが出る場合は要注意です。

6. 精神疾患または心理社会的要因による歯痛
うつ病や統合失調症、身体症状症など、心の不調が歯の痛みとして現れることがあります。歯科的な異常がまったく見つからないこともあります。

7. 特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
原因がはっきりせず、長期間にわたって続く歯の痛みです。特定の歯ではなく、あご全体が痛むように感じることもあります。

8. その他の様々な疾患による歯痛
耳・鼻・目の疾患、顎の腫瘍、自己免疫疾患など、様々な病気が歯の痛みとして現れることもあります。正確な診断には、歯科だけでなく他科との連携が必要です。

 

痛みと向き合う第一歩として:原因不明の歯の痛みは専門医へ

非歯原性歯痛は、見た目には異常がなく、痛みだけが続くため、患者さんご自身も「気のせいかな…」と悩んでしまいがちです。しかし、放っておくと生活の質(QOL)に大きく影響することもあります。

気になる痛みが続く場合は、口腔顔面痛や非歯原性歯痛に詳しい専門医に相談することをおすすめします。原因を特定し、適切な治療を受けることで、痛みから解放される道が開けます。

まずはお気軽に当院へご相談ください。あなたの痛みの原因を一緒に見つけ、最善の方法をご提案いたします。

 

医療法人社団 中野歯科医院

理事長 小笠原 延郎

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